
目次
インプラント 応用編
〜骨造成法 ソケットリフトについて〜
今回はインプラント手術の際に、必要になることがある【ソケットリフト】といつ治療についてお伝えします!
上顎でインプラント治療を受けたい!と思っても、骨が薄い…鼻(上顎洞、副鼻腔)と距離が近い…となると、すんなりインプラントを入れられないことがあります。その際に必要な方法の一つがソケットリフトという手術です。
すでにソケットリフトが必要だと言われた方、これから上顎の歯のインプラントを考えている方は必見です!
ソケットリフトとはどのような術式?
まずはじめに、ソケットリフトとはどのような治療なのでしょうか?
詳しくみていきましょう。
鼻の横、上顎の奥歯の上には、上顎洞(じょうがくどう)という空洞があります。
ソケットリフトは、この上顎洞に骨を造成する方法の一つです。
歯が抜けると歯を支えていた土台となる骨が痩せやすくなるため、インプラントの治療時に上顎洞までの骨の厚みが減ってしまい、骨量が不十分となってしまうことが多いです。
ソケットリフトは上顎洞に骨を造成することで減ってしまった骨の厚みを補い、本来ならインプラント治療を諦めないといけないところを、治療可能にできる方法です。
ソケットリフトは、上顎洞底までの骨の厚みが足りないけれど、5m mある場合に適用される骨造成術です。
上顎洞を覆う上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を押し上げてスペースを作り、インプラントを埋入するための骨の厚みを増やします。
サイナスリフトとの違い
サイナスリフトとは、ソケットリフト同様インプラントを埋め込むために十分な骨の高さが上顎にない場合に、鼻の横にある上顎洞の底部に骨補填材を埋入して骨造成を行う方法です。
ソケットリフトとの違いはインプラント治療をするために必要な骨を造成する量です。
比較的少量の骨造成量で手術が可能な場合はソケットリフトが適応され、造成する骨量が比較的多量に必要であれば、サイナスリフトが適用されることが多いです。
例えば、基本的には上顎洞までの厚みが5mm程の確保されている場合やインプラント埋入本数が1本の時にはソケットリフト、5mm以下である場合やインプラント埋入本数が複数の場合にはサイナスリフトを適用します。
サイナスリフトでは術野も大きくなるため、腫れや痛みが出るリスクが高くなると考えられます。
ただし、上顎洞には大きな血管が存在しており、サイナスリフトを行う場合に、血管を傷つけしまう恐れがある場合には、骨量が5m m以下であっても状況に応じてソケットリフト選択することがあります。
ソケットリフトを行う際には、インプラントを入れる穴を利用して骨を造成するため、術野は基本的にはインプラント手術と変わらない大きさで行えます。
ソケットリフトの治療の流れとは?
それでは、具体的にどのようにソケットリフトの治療を進めていくのかをみていきましょう。
インプラントを埋入するための穴を形成する
まずは、インプラントを埋入する箇所の歯肉を切開し、上顎洞に達するところまで骨に穴をあけます。
その際に、シュナイダー膜という上顎洞と歯槽骨の間の組織を傷つけないように押し上げます。
骨補填材を充填する
開けた穴からシュナイダー膜を押し上げるように、顎などから採取した自家骨または人工の骨補填材を入れます。
骨補填材などの充填が完了したらインプラントを埋入して穴を塞ぎ、歯肉を元に戻して縫い合わせます。
インプラントを埋入する
自家骨または骨補填材を入れた後はインプラントを固定できるように骨が形成されるのを待ちます。
再生速度には個人差がありますが、一般的には3~6か月ほどで再生するといわれています。
骨が形成され、インプラントがしっかり固定されていることが確認できたら、人工の歯を作製し装着します。
ソケットリフトのメリット・デメリットは?
ソケットリフトは話だけ聞くと少々怖い外科的な治療ですが、この治療のメリットやデメリットにはどのようなことが考えられるのでしょうか。
メリット
- サイナスリフトよりも手術の範囲が狭いため、患者様の負担を極力抑えることができる
- ソケットリフトを行ったその場でインプラントの埋入ができるため、治療回数を減らせたり期間を短縮できる
デメリット
- 上顎洞粘膜が破れていないかの確実な確認ができないので、危険性がある
- かなり繊細な手技が必要なので、担当歯科医師の経験、技術力が求められる
- 費用が高額になりやすい
ソケットリフトの治療にかかる費用はどのくらい?
ソケットリフトのデメリットの一つに費用面のことが挙がりましたが、ソケットリフトの費用はおおよそいくらくらいなのでしょうか。
価格は歯科医院にもよりますが、およそ30,000〜100,000円が相場です。
使っているものの材料費やDrの技術料により差があります。
このソケットリフトの費用とは別途インプラント埋入の手術費がかかります。
ソケットリフトの治療は痛いの?
外科的な処置であるソケットリフトですが、痛みはあるのでしょうか?
手術前
インプラント手術の始めには必ず局所麻酔をします。
その際の麻酔注射の痛みはあるでしょう。
注射が苦手な方は、表面麻酔というシールのような麻酔を先に行うことで痛みが和らぎます。
場合によって、恐怖心が強い方は全身麻酔をして行う方もいらっしゃいます。
手術中
インプラントの手術中は、上記のように局所麻酔を効かせるため、痛みを伴うことは基本的にありません。
麻酔の効き方には個人差があるため、様子を見ながら追加投与する場合もあります。
ただし、痛みは感じなくても意識はあるため、骨を削る振動を感じたり、器具の音や術中の会話が聞こえたりします。
音や振動が苦手な場合は全身麻酔である静脈内鎮静法を行うことをお勧めします。
手術直後
術後の痛みには個人差がありますが、外科手術をしたことによる傷口の痛みや、骨を造ったことによる腫れや痛みがあることがあります。
およそ術後2、3日後くらいから痛みや腫れが出始め、2週間くらいは痛みが続くことがあります。
処方される痛み止めや腫れ止めを飲むようにしましょう。
歯科医院選び
インプラント手術はインプラントを埋入した後のメンテナンスも重要であるため、その歯科医院と長くお付き合いすることになります。
自分が通い続けたい歯科医院なのかメンテナンスをきちんと行ってくれる医院なのかをみておきましょう。
患者様自身の健康状態が万全か?
喫煙やアルコール、また糖尿病や高血圧などの全身疾患が手術の成功にも関わってきます。
事前にコンディションを整える必要があります。
手術中、シュナイダー膜が破れてしまう
薄い膜であるシュナイダー膜を持ち上げる際に破れてしまうと手術は中止となります。
稀に手術は成功したとしても、患者様が大きなくしゃみをしたり思い切り鼻をかんでしまって膜が破れてしまうこともあります。
そのくらい繊細な治療なので、経験を積んだDrに治療してもらうのが安心です。
まとめ
今回はインプラント手術の際に行うことがあるソケットリフトについてお伝えしました。
安全に長持ちするインプラントを入れるためには、しっかりとした術前検査と歯科医師の手術スキル、その後のメンテナンスがとても大切です。
インプラントは埋入ことが目的ではなく、インプラントを埋入し、長く健康な状態で噛めるようにすることが目的です。
インプラントは埋入後はご自身でしっかりとケアをしていただくことと、定期的なメンテナンスを受けていただくことをお勧めします。