
インプラント 応用編 〜サイナスリフト〜
サイナスリフトとは
サイナスリフトとは、上顎のインプラント治療を希望される方の場合に、上顎の骨が不十分なときに行う手術です。
インプラントを入れる際に骨の厚みが薄い方や、多数の骨が欠損している方に適用されます。上顎の骨が足りない状態でインプラントを入れると、正しい位置に埋入できなかったり、インプラントが上顎にある空洞に落ちてしまったりする恐れがあるため、まずは骨造成手術が必要です。
骨造成手術を行い、しっかりとした骨ができて安定してからインプラントを埋入するため、治療にはおおよそ6〜10ヶ月程度かかります。
他の治療法との違い
まず、インプラント埋入前に骨を補う治療についてですが、サイナスリフトの他に以下の2つがあります。
- ソケットリフト
- GRB法
これらの治療はすべて足りない骨を増やすための術式ですが、必要な骨を作る部位や範囲」などで異なります。
下記にサイナスリフトの違いについて紹介します。
ソケットリフトとの違い
ソケットリフトは、サイナスリフトと同じく、インプラントを埋入する際に上顎の骨の高さが足りないときに行われる治療です。2つの治療は、期間や痛みなどが異なります。2つの治療の違いについて、下記の表を参考にして下さい。
サイナスリフトとソケットリフトは、2つとも上顎の骨を増やすための治療法です。
サイナスリフトは骨の厚みが3〜5mm以下で多くの歯を失っている場合、ソケットリフトは3〜5mm以上骨の厚みがあり、なおかつ失っている歯の本数が少ないときに適用されます。
また、ソケットリフトはインプラント埋入と骨の造成を同時に行えるため、治療期間が短いメリットがあります。
狭い範囲を治療するため傷も小さく、サイナスリフトよりも痛みや体の負担が小さいです。
GBR法との違い
GBR法とは骨造成法を意味しますので、サイナスリフトもGBR法の一つといえます。一般的に使用される意味での骨造成法は歯槽骨側に骨を作る場合を指します。
方法は、骨を増やしたい部分をメンブレンと呼ばれるコラーゲンなどの人工膜でカバーし、その中に人工の骨補填材を入れて骨を増やすという方法です。
サイナスリフトやソケットリフトが上顎の治療に用いられ、上顎洞に骨を作るのに対し、GBR法はさまざまな場面で使用され、歯槽骨側に用いられます。
インプラントの埋入と同時に治療ができる場合とあらかじめ骨を造成し、骨が安定してからインプラントを埋入する必要なケースがあるため、治療期間については担当歯科医師に確認する必要があります。
あらかじめ大きく広範囲にGBR法を行う必要がある場合には、手術を行ってから3〜6ヶ月ほど経過し、骨が安定してからインプラントの埋入を行います。
インプラントを埋入場所や治療期間を検討して、自分に合った治療法を選びましょう。
サイナスリフトにかかる費用
サイナスリフトにかかる費用は、10〜30万円程度です。
骨補填材が高価なことや、手術に高度な技術が必要なため、治療が高額になる傾向があります。
ただし手術が必要な範囲や口内の状態によっても費用が異なるため、クリニックで相談してみると良いでしょう。
サイナスリフトのメリット・デメリット
サイナスリフトは、歯周病や虫歯によって骨が細くなってしまった方でもインプラントが入れられるメリットの多い治療です。しかし当然デメリットも存在します。サイナスリフトのメリットとデメリットについて紹介します。
サイナスリフトのメリット
サイナスリフトのメリットは、以下の3つです。
- 骨が薄い方でも手術を受けられる
- 広範囲の治療に向いている
- 粘膜の損傷などのリスクを低く抑えられる
ソケットリフトはインプラントを入れる本数分の治療が必要になりますが、サイナスリフトは一度に広い範囲の骨造成ができるので、広範囲に複数本のインプラントを入れる場合に適しています。上顎の粘膜を実際に目で確認しながら治療できるため、上顎洞粘膜損傷のリスクを低く抑えられる点も特長です。
サイナスリフトのデメリット
サイナスリフトのデメリットは、以下の3つです。
- 手術範囲が広いので、痛みや腫れ、内出血がでやすい
- 費用が高額
- 骨が作られるまでに半年程度時間がかかる
サイナスリフトは手術範囲が広いので、体の負担が大きくなります。また、歯茎の切開や骨切りが必要になるため、痛みや腫れが強くなる可能性があるでしょう。治療期間が長い点もデメリットといえます。手術とインプラントの埋入が必要なため、トータルの治療期間は6〜9ヶ月程度です。すぐにインプラントを埋入したい方にとっては、治療期間が長いと感じる場合があります。
サイナスリフトの失敗やリスク
サイナスリフトは失敗の少ない治療ですが、失敗やリスクが起こる可能性はゼロではありません。考えられるリスクとして、下記が挙げられます。
- 腫れ・痛み
- 上顎洞にインプラントが入る
- 副鼻腔炎
それぞれの症状について、見ていきましょう。
腫れ・痛み
サイナスリフトの治療後に腫れや痛みを感じる可能性があります。治療中は麻酔を行うため痛みは感じませんが、手術後に痛みや腫れを感じることがあります。手術後3日をピークに、10日間程度症状が気になるケースが多いでしょう。手術後は鎮痛剤が処方されますが、それを飲んでも強い痛みが長時間続く場合や腫れがひどい場合は、細菌感染を起こしている可能性があります。早めに医師に相談することが必要です。
上顎洞にインプラントが入る
まれではありますが、鼻の両側にある上顎洞と呼ばれる空洞部分に、インプラントが入ってしまう可能性があります。インプラントが上顎洞に入ると感染を起こしたり、くしゃみした際に鼻からインプラントが出てくるなどのトラブルが起こることもあります。CTを用いて上顎洞の位置や骨の厚みを入念にチェックすることでリスクを下げられるため、病院選びが大切です。
副鼻腔炎
上顎洞に細菌が入って炎症を起こし、鼻水や鼻詰まりが起こる可能性があります。蓄膿症とも呼ばれる症状で、上顎洞に細菌が入って炎症を起こすことによって、鼻水・鼻詰まり・目の下の痛みなどの症状が起こります。上顎洞にインプラントが貫通・脱落している場合があるので、症状に気がついたら早めに診察を受けるようにしましょう。
サイナスリフトの治療手順
実際にサイナスリフトの手術を受ける際の手順について紹介します。
麻酔
治療前に局所麻酔を行います。手術への恐怖心が強い方には、静脈内鎮静法と呼ばれる施術を行い、半分眠った状態で手術を行うことも可能です。
顎の骨に窓を作る
麻酔が効いたのを確認し、インプラントを入れる部分の頬側の歯肉を切開します。露出した骨に穴を開けて窓を作り、上顎洞を覆っているシュナイダー膜を傷つけないように処置を行います。
骨補填材を入れる
顎骨とシュナイダー膜を剥離して、骨補填材を入れます。十分に入れたら骨に作った窓を塞ぎ、剥離した歯肉を戻して縫います。
インプラントを埋め込む
骨補填材によって骨が十分な高さができたら、インプラントを埋入します。骨補填材によって骨が安定するまでは、3〜6ヶ月程度必要です。
サイナスリフトの治療後に気をつけること
サイナスリフトの治療後は、しばらく安静が必要です。手術後には、下記の点に気をつける必要があります。
- うつ伏せ寝
- 激しい運動
- くしゃみ
- たばこ
- 飛行機への搭乗や水中ダイビング
うつ伏せで寝ると、血行が悪くなり、手術した部分に血液が行き渡らなくなります。傷の治りが遅くなるため、うつ伏せの姿勢は避けるようにしましょう。運動や歌唱など、激しい呼吸をともなう行動は2週間程度控えてください。
またくしゃみや鼻をかむ行為を行うと、上顎洞にある粘膜に負担がかかり、破れてしまう可能性があります。手術後3週間〜1ヶ月程度は鼻をかまないようにしてください。喫煙者の方は、最低でも抜糸するまでは禁煙が必要です。手術後は体がデリケートな状態のため、できるだけ安静に過ごすようにしましょう。
サイナスリフトの治療を受けるクリニックの選び方
サイナスリフトによる治療のリスクを下げるためには、クリニック選びが重要です。クリニックを選ぶ際には、以下の3つのポイントをチェックしてみてください。
- 丁寧に検査を行っているか
- 治療計画を立ててくれるか
- 清潔なクリニックかどうか
上記について詳しく説明します。
丁寧に検査を行っているか
サイナスリフトの治療前には、口内トラブルの有無や骨の高さなどをレントゲンやCTスキャンなどできちんと検査することが必要です。検査が不十分な場合、インプラントを埋入した際に取れてしまったり炎症を起こしたりといったリスクが起こる可能性が高まります。トラブルを防ぐためにも、きちんと検査を行っているクリニックを選びましょう。
治療計画を立ててくれるか
サイナスリフトは、手術を行って骨が安定するのを待ってからインプラントを埋入します。治療計画が不十分な場合、後から思っていたよりも高い金額を請求されたり、治療期間が想定より長くなったりと、治療自体を後悔する可能性もあります。治療計画を立て、それを丁寧に説明してくれるクリニックを選ぶようにしましょう。
上顎のインプラント治療を受けたいけれど、他院で、骨が少ない、インプラントができないなどのお話があり、お悩みの方は、ぜひ一度東灘区のにしうみ歯科・矯正歯科へおにご相談ください。