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総入れ歯ってどんな治療?
総入れ歯とは歯を全て失ってしまった場合の治療法です。
総入れ歯はプラスチックでできた土台となる歯茎部分と人工の歯で構成されています。
保険が適用されるため比較的安価ですが、天然の歯に比べて噛む力が20〜30%まで落ちるというデータもあります。噛む力が落ちると体にも大きな影響があります。
では、総入れ歯について詳しく見ていきましょう。
どうやって歯茎とくっついているの?
プラスチックがなぜ引っかかるところもない歯茎にくっつくのか、とても不思議ですよね。
答えは『吸着現象』を利用しているのです。
※吸着現象とは
小学校の理科の授業などで経験された方もいらっしゃるとおもいます。ガラス板とガラス板の間に1滴水を垂らして、2枚のガラス板をくっつけると、外れなくなる。間に空気が入ると簡単に外れる、というような現象です。
この吸着現象を発現できると総入れ歯はしっかり歯茎にくっついてくれますし、吸着現象が減少すると総入れ歯は非常に落ちやすいものになります。
◯吸着を良くするためにはどうしたらいいの?
・入れ歯の形を歯茎にしっかり合わせる
・歯ぐきが痩せてしまった場合は安定剤を使用する
・定期的にメンテナンスを受ける
・入れ歯を正しく装着する(乾いた状態ではなく、軽く水で濡らしてから装着する)
・両側で噛むようにする、噛み合わせを合わせる
総入れ歯の吸着に重要なこと
適合
総入れ歯は歯茎との間に空気が入ると簡単に外れてしまうため、しっかりと歯茎と適合していることが必須となります。
噛み合わせのバランス
噛み合わせのバランスが悪いと入れ歯が動いてしまうため、吸着が現象してしまい、外れやすくなります。
口腔内の水分
吸着現象を得るためには、入れ歯と歯茎の間に水が入ることが必要です。
唾液が少ない方は非常に入れ歯が外れやすいことがあります。唾液の量は年齢ともに減少傾向にありますので、唾液腺のマッサージやお口の体操をして、唾液が出やすい状態にしておくことが望ましいですね。
総入れ歯のメリット・デメリット
メリット
・保険適用で費用を抑えられる
・治療期間や作製期間が短い
・身体への負担が少ない
・外科処置を必要としない
・ほとんどの症例で適応となる
・治療のリスク・失敗がない
・持病がある方や体力に自信のない方でも受けられる
デメリット
・噛む力が弱くなる
・適応期間が必要(調整が複数回必要)
・骨吸収が促進される可能性がある
・入れ歯が合わない場合は痛みを感じる
・安定性が悪く、外れることがある
・入れ歯の床の厚みで食事の味や温度を感じにくい
総入れ歯は、顎の骨に直接固定されていないため、食事の際に不安定さを感じやすいという特徴があります。また、総入れ歯は天然の歯と比べて噛む力が20~30%程度弱くなるため、硬い食べ物を噛む際には注意が必要です。
入れ歯の種類
保険適用
費用を抑えることができますが、審美性や耐久性が低くなる傾向があります。また、厚い作りになっているため、温度を感じにくく、異物感も強くなる可能性があります。
自由診療
使用する素材に制限がなく、機能性や審美性を高めることができます。床が金属で出来ているため、薄くてもしっかりと密着させることができ、異物感が少ない傾向があります。
総入れ歯は、人工歯と歯茎の部分からなるシンプルな構造で、患者自身が着脱しながら使用します。総入れ歯を作るには1ヶ月程度の時間がかかるため、抜歯を伴う治療の場合は、歯がない期間を過ごす可能性があります。その期間は咀嚼ができず、食べ物をそのまま飲み込むことになりますので、ゼリーやペースト状の食べ物など、胃や腸に負担をかけない食事を心がけましょう。
総入れ歯は良い面もありますが、あまり良くない面も持ち合わせています。
特に噛み合わせの力が弱くなると、転倒リスクが高くなったり、オーラルフレイル(口腔機能低下症)のリスクが高まる可能性があるとされています。
ちなみにですが、歯を失ったまま入れ歯を使用しない場合、転倒のリスクは2.5倍になるとの報告があります。
これは、歯を失うことで臼歯の咬合が失われ、脚力やバランス機能が低下することが原因と考えられています。また、歯や咀嚼筋から中枢に向かう神経が体のバランス機能と関連していることも示唆されています。
歯が19本以下で義歯を使用していない人は、歯が20本ある人に比べて転倒のリスクが高くなります。しかし、歯が19本以下でも義歯を入れることで、転倒のリスクを約半分に抑えられる可能性も示されています。
やはり、まずは歯を失わないようにすることが重要ですね。
しかし歯を失ってしまった場合でも、そのままにはせず、しっかり噛めるようにすることで、その後の身体に起こる悪い影響を減らすことが可能です。
総入れ歯を長年使用されている方、入れ歯を作製したけれど、入れ歯の調子が悪い方、一度歯科医院で健診を受けられると良いかもしれません。